列柱の下で教えを広めたストア派の哲学者
禁欲的で自分に厳しい人のことをストイックといったりしますが、皆さんは「ストイック」の語源を知っていますか?
古代ギリシャ哲学に「ストア派」という一派があり、ストア派を英語で「stoicism」、ストア派の哲人を「stoics」といい、これがストイックの語源とされています。
ローマ帝国の五賢帝として有名なマルクス・アウレリウス・アントニヌスもストア派のひとりです。
「ストア」の語源は、教えを広めたアテネの哲学者ゼノンが、アゴラに面したストア(列柱)の下で哲学を講じたからといわれています。
紀元前304年頃、当時商人として活動していたゼノンは航海中に難破してしまいました。
全てを失ったゼノンは哲学者のクラテースとスティルポンに出会います。
そこで哲学の教えを受けたことが彼の人生を変え、以後彼自身が学んだことを列柱の下で教え説いたと言われています。
ストア派の教え
ストア派の根本的な思想は、「自然に従う」ということです。
私達が想像するストイックなイメージと少し違いがあるように感じますね。
「人間は自然の法則に従って自分の役割を果たすことで幸せになれる」
「我々にはコントロールできるものとできないものがある、コントロールできるものに注力し、コントロールできないものに囚われてはいけない 」
こうした考えのもと、理性(ロゴス)によって感情(パトス)を制することで欲望を抑え、確固たる自己の確立を目指したとされています。
本来自分でコントロールできないものをコントロールしようとすると、相対的な価値観の中で生きる事になってしまいます。
それは他者に依存した生き方であって、常に他者に求め続ける生き方は不幸というわけです。
一方、自分でコントロールできるものに集中する生き方は、他者との比較から解放されて自由で、妨げられる事がありません。
自分自身の生き方を全うできるわけです。
だからこそ確固たる自己の確立を目指した、というのがストア派の根本的な思想です。
意外と質素なエピクロス派
ストア派を紹介するうえで一緒にご紹介したい思想が「エピクロス派」です。
「禁欲的なストア派とは反対に、エピクロス派は快楽に溺れることを良しとしている」といったイメージがありますが、実はエピクロス派の思想も意外と質素なものでした。
エピクロス派の思想を快楽主義と呼ぶことがありますが、実際に彼らが求めた快楽は、身体が最低限必要とする「飢えないこと、渇かないこと、寒くないこと」が満たされた状態でした。
エピクロス派は「隠れて生きる」ということをモットーにしていて、その教えは「人間の命も原子からなる以上、死を恐れたり不安に思ったりすることは無意味で、感覚に基づいた穏やかな快楽(アタラクシア)を求めるべきだ」というものです。
社会の混乱を避けて自給自足の生活を送りながら、感情を揺さぶられる機会をなるべく減らすことによって心の平静を得ることを目指したのです。
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